石徹白暮らし体験談 櫻井すえこさん - 第五号:2010年6月

石徹白では今、真っ白な雪景色が、たちまち色とりどりの花々や新緑にかわり、ようやく待ち望んでいた春がやってきました。冬が寒い分、春に吹き出す新たな命の力が大きく、頼もしく感じられます。

さて、この心躍る春先の石徹白暮らし体験談には、櫻井すえこさんに登場していただきます。石徹白に来て10年。その間、二人の子供を出産し、子育てされている先輩ママさんです!

―――石徹白に来てどのくらいたちますか?

ちょうど10年がたちました。結婚したのが10年前。結婚する前、2年くらいは当時住んでいた岐阜市から石徹白にちょくちょく通っていたから、今住んでいる上在所の人には、そのときからよく知ってもらっていました。

平日は石徹白で、週一度だけ街へ買い物に行く。

―――それでは、石徹白に移住するっていうのは、あんまり違和感はなかったの?

冬は雪が多いからそんなに行ってなかったけど、夏場は月に一度くらい来ていました。私は可児市出身なんですけど、コンビニまですごく遠くて、はじめは不便だなぁと思いました。今はもう慣れましたけど・・・。

今では、週に一度くらい、白鳥にお買いものに行くのがかえって楽しいくらい。

―――なるほど・・・。ちなみに、お買いものは白鳥が多いですか?

食糧品は、白鳥のバローや、大和のピオ、美濃のサピーあたりかな。洋服は大和のシマムラとかマツオカとか。そこらへんまで行けばだいたい一通り揃うから。カタログで注文するときもあるけど。子供服なんかは、お古をいただけるから助かってます。

急に、明日何かが必要、と言われたら買いに行くのが不便だけど、土日どちらかに買い物に出かけるので十分だから。そんなに不便とは感じないです。

石徹白での出産事情

―――お子さんは、女の子と男の子のお二人ですよね?

小学校3年生の“あゆ”と、ちょうど2歳になったばっかりの“晴(はる)”。 あゆは、白鳥病院で産みました。そのときは、白鳥で産めたんですよねー。

―――えっ、今は白鳥では産めないってこと・・・?

そう、2年くらい前に、産婦人科がなくなっちゃって。婦人科はあるんだけど。

それからは、郡上八幡まで行かなくちゃならない。だから、下の子の晴(はる)は、八幡病院で産みましたね。

つい最近出産したふさちゃん(ブログで娘さんの“芽衣沙ちゃん”が登場してます!)は、ずっと八幡に通っていたから、大変だったと思う。

―――そうなんだ・・・知らなかったです。ちょっと遠くて大変ですよね・・・。

冬は特に。うちは、主人はお勤めしているんだけど、会社の人の理解もあって、平日でも私を病院まで連れていってくれたので、それはすごく助かりましたね。

地域ぐるみで子育てサポート

―――確かに、そういうとき、地域の人の理解があるとありがたいですよね。

そう、やっぱり、子育てしてると、そういうところは感じます。うちの子供たちも、在所の人たちがみんなかわいがってくれる。私や父母が忙しいとき、他の方が預かってくださったりしてくれる。

子供の成長をみんなが一緒に喜んでくれて。「子供がいると癒されるよ」とか「風邪ひかせるなよー」、とかって声をかけてくださるし。

―――やっぱり、学校も、都会の学校とは違うんですよね、きっと。

あゆは、3年生で、同級生が一人。4年生が一人。3・4年生あわせて複式学級なんですね。だから、ある意味、緊張感はあるみたい。宿題忘れたり、さぼったりしたらすぐばれる(笑)

逆に、吸収はいいと思う。何かと覚えが早いし。先生とマンツーマンみたいな。

―――先生とも、学校のみんなとも仲が深まりますね。

年の差関係なく、学校全体で行事があって、みんなでがんばろう!という感じがあるかな。それにお互いいろんなことを教え合うし、年上の子が年下の子の面倒を見るのが当たり前になってる。

晴も、今保育園に行っていて、保育園にはもう一人5歳の子がいるのだけど、よく面倒見てもらってる。私が教えていなくても、できることが増えてくから、すごいなーって思って。

―――それはすごいですね。頼もしいですね!

支援センターでのお仕事

―――今、すえこさんは、お仕事されてるんですよね?

支援センターというところで昼間は働いています。お年寄りが集まる施設なんだけど、晴が1歳を過ぎた頃に職員に欠員が出て。

支援センターでは、週に一度お医者さんが来て、診察があります。あとは、お年寄りがデイサービスを受けに来る。いらっしゃるのは10人前後かな。冬場は一人で過ごすのが不安だからって、自分の子供のところに行く方もいらっしゃいますね。

そこで、食事づくりを中心にやってます。毎日のメニューを考えて、材料を発注して、つくって、食べてもらう。「おいしい、おいしい」って食べてもらえるとうれしいです。

―――すごい・・・料理の腕が上がりそうなお仕事ですね。

自分のうちでつくる食事が薄味になったかも・・・。お年寄りには減塩がいいっていうことで・・・。必要以上にやわらかく煮てしまうことも・・・(苦笑)

雪下ろしで、蔵から飛び下りた!?

―――すえこさんのおうちって、とっても立派な構えですよね。いつ頃の建物なんですか?

たぶん、築100年くらいと思う。普通の家とちょっとつくりが違うみたい。自分たちのご先祖様のための間と、神様の間と二つあるの。母の父が神主さんをやっていて、それまで何代か、神主をやっていたみたい。その関係で、こういう家なのかなぁ。詳しいことは分からないけど。

―――建物自体が大きいから、雪下ろしも大変ですか?

でも慣れれば、屋根も登れる。私は石徹白に来たその年から登りました。さすがにお腹が大きいときは控えたけど・・・。

以前、蔵の上に登って雪下ろししてたんだけど、梯子をかけたところにたどりつけなくなっちゃって、降りれなくなった。それで、えいやって飛び降りたことがあって(笑)

―――ええっっ! 大丈夫だったんですか?

“ぼす”って雪にはまっただけだったから大丈夫だった。

―――す、すごいですね・・・無事でよかったです・・・。でも、屋根くらい登れないと、石徹白では暮らせないですね・・・。

確かに冬は大変で、覚悟はいるかもしれない。はじめは不便さも感じると思うし。

だけど、ほんと、住んでいる人がみんないい人ばかりだし、おすすめしたいですね。特に子供がいる方には来てもらえるといいな。「住めば都」だと思います。

とっても心強い先輩!というかんじで、この後も個人的におしゃべりさせてもらいました♪やっぱり、実際、住んでいる方にお話しを伺って、日常のことを聞くことができると、石徹白に住むことのイメージがぐんと湧いてきます!

このコーナーで、「こんな話が聞きたい」「こんなことはどうしてるの?」など、リクエストがありましたらお知らせください。みなさんの疑問質問にお答えいただけるようなインタビューをしていきたいと思います!

聞き手:平野馨生里